第五章ごんは、お念仏がすむまで、井戸のそばにしゃがんでいました。兵十と加助は、またいっしょに帰っていきます。ごんは、二人の話を聞こうと思って、ついていきました。兵十の かげぼうし をふみふみ行きました。お城の前まで来たとき、加助が言いだしました。「さっきの話は、きっと、そりゃあ、神様のしわざだぞ。」「えっ。」と、兵十はびっくりして、加助の顔を見ました。「おれはあれからずっと考えていたが、どうも、そりゃ、人間じゃない、神様だ。神様が、おまえがたった一人になったのをあわれに思わっしゃって、いろんな物をめぐんでくださるんだよ。」「そうかなあ。」「そうだとも。だから、毎日、神様にお礼を言うがいいよ。」「うん。」ごんは、「へえ、こいつはつまらないな。」と思いました。「おれがくりや松たけを持っていってやるのに、そのおれにはお礼を言わないで、神様にお礼を言うんじゃあ、おれは引き合わないなあ。」 第六..